山とオチと意味はいつも通りどこかへ吹っ飛びました。
「アミティ」
「シグどうしたの…うわっと!?」
シグに突然右手で太ももの裏をすくわれ、身体の軸を動かされて足が宙に浮く。
転ぶ!と思った矢先に腰をシグの紅い左手に支えられ、
そのままあたしの身体はシグの両手を支点として低空に静止することになった。
こういう体勢、何っていうんだっけ。
「シグ、これって…」
「お姫様抱っこ」
そうそう、お姫様抱っこ。
「そっか、お姫様抱っこなんだぁ…」
……なんで!?
突然の行動に思考はショートし、そのまま頭は爆発する。
「シグ!?あの、えっと、」
慌てるあたしを気にかけることなどなく、シグは前や横、背中からあたしの身体のラインをなぞったり、
手を握ったり、ほっぺたをぷにぷにしたり、二の腕を握ったり、とにかく好き放題していた。
「シグ!くすぐったいよ!」
「ふ~ん」
「ふーん、って何がどうしたのー!?」
「やっぱり、やわらかい」
「やわらかい?」
「アミティが」
あたしが、柔らかい?っていうのはつまり?
ううん、そんなことない。確かに昨日のお昼ご飯は少し多めに食べちゃった気はするけど、
ちゃんとそれ以上にぷよ勝負もしてるし、運動だって十分してるはずだし…
なんて考えてると、
「ちがう」
あたしの考えを読まれた上に真っ先に否定された。
「じゃあなんで…」
「前よりおんなのこの身体になってる」
「女の子…!?」
第二次性徴期。もちろんあたしだって学校の授業で習って知ってるし
そろそろそういう年齢だろうというのは分かってたけど、
面と向かってそれを言われると凄くぞわぞわする。
おまけに、シグに「女の子」だなんて言われることなんか滅多にないから、恥ずかしくて恥ずかしくて。
あまり自分を女の子って意識したことがないせいか、
そう言われると男女というものを意識してしまって酷く脳みそが熱い。
自分の目の前に居る人を、男の子ってついつい思ってしまって、まっすぐ正面を見ることができない。
「アミティ。あみてぃー」
シグに声をかけられる。異常なほどにどきどきする。
「なぁに」
「降ろしたほうがいい?」
声が出ないままとにかく首を上下に振ると、そっとおろしてくれた。
お姫様抱っこから解放されてしばらくして、やっと心が落ち着いて、改めて自分の身体を確かめる。
やわらかい。って、シグは言ってた。
確かに言われてみれば、さっきシグが抱っこした手よりかはちょっとそうなのかもしれない。
自分で自分の身体を触ってみて、これが身体の成長なんだってことを自覚する。
でも比べる相手が居ないとはっきりとはわからない。だったら。
「…よし。」
後であたしからシグに悪戯のお返しをしちゃおう。そう心に決めた。