明け空の展望台

ヤフブロより移転。ぷよの二次創作ゲームを作る者です。よろしくお願いいたします。

夏の終わりに シグアミ

思いつきで書き始めて案の定バテたやつ




夏の夕暮れ、波打ち際。少年と少女は海に沈みゆく斜陽に照らされながら歩いていた。

やがて少女は呟く。


「もう夏休みも終わりだね」


少女の言葉に、少年は昼間に捕まえたカブトムシを見つめながら口を開く。


「夏の終わりがこんなに寂しいって、知らなかった」

「いつもの夏休みは最後に宿題でバタバタしてたもんね!」

「ひどい」


少女の天然ゆえの容赦ない一言に少年はくすくす笑いながら、

「けど間違ってない」と言葉を続ける。


「今年はやらなきゃいけないことを早めに終わらせて、沢山楽しいことをしようって思ってたのになぁ」

「まさか楽しんだら逆に最後がしんみりするなんて、気づかなかった」

「胸がきゅうって締め付けられるような気持ちになっちゃうね……」

「お別れするものが沢山ある」

「例えば?」

「長い夏休みとか、暑さとか、早い朝に遅い夜、…あと、」


つよくてかっこいいたくさんのムシも。そう寂しげに言いながら手に乗せていたカブトムシを森に放つ。


「不思議だね。他の季節の境目よりも失うものがいっぱいある気がするよ」

「気がする、じゃなくて、本当にそうなんだと思う」

「そうだよね……あのね、シグ」


少女が一歩前に出て、足を止めて少年の方に振り返る。

その表情は陽の陰に隠れてよく見えないが、どこか哀愁が漂っていた。


「このままいろんなものを失いながら黙って夏休みが終わるのを待ってるとね、
 きっとちょっと、後悔すると思うんだ」

「うん」

「だからね!」


少女はサンダルを脱ぎ捨て、海に足を付け、今度は笑顔で少年の方に振り向く。


「最後にいっぱいの思い出を作りたいんだ!
 寂しさなんて感じないくらい楽しい、シグとあたしの、二人だけの思い出!」


そう言って海の水をすくって彼の方に投げつける。

少年は一瞬あっけにとられていたが、


「……とっても、アミティらしいや」


そう一言だけ呟き、笑いながら海の方へ駆け出した。






「まずはさっき水をかけた仕返しをしないと。待てー」

「えへへっ、こっちだよー!……うわっ!!」

「アミティ大丈夫かー」

「大丈夫だけどびしょ濡れになっちゃった……そうだ!シグも道連れだー!」

「うへー……あはははは、もう許さないぞー!」

「きゃっ、やめてよぉ~!」







陽の落ちる海の浜辺に、水音と二人の笑い声が明るく響き渡る。

二人の夏は、まだ終わらない。