寝ているアミさんを愛でたいという欲に沿って勢いで書いた何か。
「ただいま~~~~・・・・・・」
「おかえり」
夜が更けてきた頃。家に帰ってくるや否や、アミティは太陽の杖を傘置き場に投げいれながら
リビングのソファになだれ込むように倒れこんだ。
「疲れた?」
問いにアミティはソファにうつ伏せのままコクコクと頷く。
アミティとは日替わりで魔導師の仕事をやってるんだけど、
聞くと、今日は依頼に遺跡調査があってから心身ともに疲れ果てたらしい。
力仕事が多いなら代わってあげればよかった、なんて微妙に後悔していると、
アミティがうつ伏せのまま話しかけてきた。
「ねえシグ、膝枕して」
「膝枕?」
「疲れたから一眠りしたいな、って」
「柔らかくないぞ。それに、まだお風呂入ってないでしょ」
「後で入るから~……」
「そうか。じゃあおいで」
横に座ってぽんぽんと膝を叩いたら、アミティはむくりと起きて膝の上に頭を乗せた。
満足げな笑顔のアミティと目が合う。
「膝、かたくない?」
「ううん、十分気持ちいいよ~!」
膝の上でごろごろ転がってみせる。
傍から見たら子供か、って思われそうだけど、こういう光景はいつものことだ。
「そうだ!シグ、子守唄とかって、歌える?」
「子守唄?」
「せっかくの膝枕だし、もっと気持ちよく眠れたら幸せだなぁ~、なんて。」
「思い出しながらなら、ちょっとだけは歌えるかも」
なかなか見せない姿だけど、アミティは疲れてたり寝起きだったりすると
気分しだいでちょっとだけわがままになって、凄く子供っぽくなる。
そんなアミティも、だいすき。
「ねーむれー、ねーむれー、」
「……」
まずい、子守唄の歌詞なんて殆ど覚えてない。
……なんて思う頃には既にアミティは深い眠りについていた。
素敵な魔導師になった今でもその寝顔は子供の顔そのもので、昔と全く換わらない。
そしてそんな無防備な姿を自分だけが眺めることができるということに小さな喜びを覚える。
「ちょっとくらい触っても、起きないかな」
悪戯半分の気持ちで頬に触れると身体がぴくっと動いた。
愛しくてそのまま頭全体をわしゃわしゃと撫で回すとへにゃっと力の抜けた笑顔。
ちょっと面白くなってきて、他のところも触りたい気分になってくる。
頭と反対側のほうに目をやるとちょうどよく太ももが露出していたのでついついなぞるように触ってしまった。
すると「ん~……」と抜けた声とともに、アミティは寝返りを打ちながら、腰にぴったりと腕を回してきた。
これではやめてのサインなのか、もっとのサインなのかわからない。
もうちょっと太ももを根元に向けてこしょこしょとくすぐると、
きゅっと、腰を包む腕の力が少しだけ強まった。
アミティ、それはだめ。思わずむらっとしてしまう。
「……こほん」
これ以上いけない、理性が頭の中で響いて正気に戻る。
アミティがこんなに幸せそうに寝てるのに邪魔してはいけない、なんてことはわかってたはずなのに、
ついついつまみ食いのように手を出してしまった。
そんなことは後ですればいい。今はアミティをぐっすり寝かせてあげよう。
ついでにこれ以上心に魔物が宿ったらいろいろ危ないし、このまま一緒に寝ちゃおう。
「アミティ、おやすみなさい」
布団を一緒に被るとアミティがまたニンマリと笑ったように見えた。
どんな夢を見ているんだろう。アミティと同じ夢、見てみたいな。
おしまい