明け空の展望台

ヤフブロより移転。ぷよの二次創作ゲームを作る者です。よろしくお願いいたします。

スーパームーンと皆既月食の小話 シグアミ


注意
・寝ぼけて自分でも何書いてるのかわからぬまま即興で書いたため不備に満ち溢れてる
・当然のように付き合ってるシグアミ
・山とオチと意味の迷子
・自然と混ざってくる捏造設定





いつも以上に輝かしい月夜。今日はスーパームーン

プリンプ中の誰もがその眩い光に魅了され、

ある者は外へ出てはしゃぎ、ある者はじっとつきを見つめる中、
 
アミティは布団に包まって、シグはその横で椅子に座って、じっと月の煌きを眺めていた。


「・・・シグは、外へ行かないでいいの?」

「ここからでも月は見える」

「ごめんね、付き合わせちゃって」

「大丈夫。アミティは身体は平気?」

「うん。冷たくはなってるけど、むしろますます元気なくらいだよ!!」

「・・・・そうか」



彼が彼女の手を握ってみると、既に氷のように冷たくなっていた。

冷たいだけで肌の柔らかさはそのまま。別に死が近づいているわけではまったくない。

アコール先生曰く、接近した月の影響で彼女の内にある存在が反応し、魔力を高めているらしい。

膨張した魔力は仄かに輝くオーラとなって彼女を包み込む。

それにより彼女の身体へ悪影響を及ぼすことはないというが、

それでもシグとしては心配なものは心配だ。



「お月様、きれいだね」

「きれい。アミティもお月様に似た顔をしてる」

「そう?」

「そう」

「シグってばいつも以上に優しいね」

「気のせい」


ちょっと照れくさそうに顔をそらすシグ。彼女はふふっと笑った。




しばらくすると、月が少しずつ、欠け始めた。皆既月食だ。

同時に彼女の表情も歪む。


「アミティ??」

「ごめん、シグ・・・ちょっと苦しくなってきちゃった・・」

「どんな感じ?」

「胸が苦しいの。内側から、とっても嫌な物が溢れてきてるみたいで・・・・
 まるで、心が凍てついて赤黒く塗りつぶされてるみたい」



それはまるで彼女が月と一体化しているかのようであった。

月が欠けるにつれ、まるで心臓を抉られるかのように彼女の苦痛も増幅する。

月が紅く染まるにつれ、彼女の心は狂気を宿し始める。

スーパームーンで増幅された彼女の魔力が、皆既月食により反転する。

彼女の周囲には紅く邪気に満ちた魔力が溢れ始めていた。


「なに、これ・・・」


今まで月食で多少体調を崩すことはなくもなかったが、

スーパームーンと同時に月食を経験したことのない彼女にはその魔力が怖かった。

何よりも、そのおぞましい闇が、自分の内側から溢れていることを信じられなかったのだ。




「アミティ・・・」

「ごめんねシグ。今は一人に・・・」

破壊衝動の芽生えを認識する。このまま魔力を溜めていたら、

恐らく意識は耐えられずにそのまま月食の如く飲まれるであろう。

少しでも精神が崩れれば、きっと暴走は避けられない。

せめて隣に居る大切な人は傷つけたくないと彼を追い出そうとしたが、


「だめ、一緒に寝よ」

「え、ええ、えええええっ!?」


あろうことか、彼はにへらと笑って彼女のベッドに突っ込んできたのだ。



「だめだよシグ!傷ついちゃう!」

「平気」


そのままアミティにくっつき、体にぺたぺたと触れ始める。


「今だけはアミティはひんやりだ。アイスみたい」

「もう~・・・シグってば・・・」

「でもほっぺたはいつも通りにやわらかい」

「危ない魔力が満ちてるのに・・・って聞いてる?」

「おなかもやわらかい」

「ひゃっ!!?く、くすぐったいよ~!!」

「ふふっ、やっと笑ってくれた。おおー。腋の下もやわらかいー!」

「や、やめて~~!」







気づくと数十分。

月の魔力を受けて冷えていた彼女の身体はすっかり火照ってしまっていた。


「もう~~・・・シグってばいきなりどうしたの?」

「・・・よし、そろそろ大丈夫か」

「大丈夫って、何が・・・あっ」



改めて月を見ると、とっくに月食は終わってしまっていた。


「・・ということは?」


自分の状態を確認する。相変わらず魔力は溢れ続けているが、月食時の黒い魔力はない。

心の中のモヤモヤしたあの感覚も、何事もなかったのように消え去っていた。

さっきのシグの行為はさしずめ、彼なりの自分へのメンタルヘルスのようなものだったのだろうか。


「シグ、月食の間にあたしが暗くならないようにしてくれてたの?」

「知らない」


あくまで彼はしらを切る所存らしい。しかしその表情には明らかに笑みがこぼれていた。バレバレだ。


「ありがとうね、シグ」

月食は気になってたけど、アミティが苦しそうだったから仕方ない」

「でもシグの気遣いって、なんだか変だね」

「ひどーい」


あからさまに拗ねるシグ。その様子は子供みたいで、とてもいとしいものだった。


「アミティ、もう身体は平気?」

「うん。すっごく元気だよ!」

「それならどうしよう」

「もう少しだけ、お月見していよう」

「・・・そうしよ」



二人はそんな他愛のないことを言いながら、今度は二人ともベッドに包まって月見を始めた。

もっとも、シグはアミティのほうばっかりを見ていたわけだが。






オチが迷子