明け空の展望台

ヤフブロより移転。ぷよの二次創作ゲームを作る者です。よろしくお願いいたします。

子供の日 後編 シグアミ

注意:前編を見てから見てください。
    話の内容がわからなくなります。
 

 
 
 
 
 
AM11:52 ナーエの森
 
 
 
アミティ「はぁ・・・はぁ・・・・
 
 
 
アミティは自分の感情に任せて走り続け、疲れて木に座り込んだ。
 
 
 
アミティ「っく・・・いや・・・・・あたし、あたし・・・・
     シグに酷いこと・・・しちゃった・・・
 
 
 
アミティの頬からは、涙がとめどなく流れ出る。
大好きな人に自分のことを忘れられ・・・・悲しくて悲しくて、仕方なかった。
けれど、その大好きな人を、感情任せに叩いてしまったのも心のどこかで後悔していた。
どうすればいいのか、わからなかった。
しばらくうずくまって泣いていると、人影が彼女を覆った。
 
 
 
シグ「・・・見つけた
 
アミティ「・・・!
 
 
 
アミティがはっと上を見ると、シグの姿がいた。
叩いた跡がちょっと腫れ上がっている。
 
 
 
アミティ「来ないで!
 
 
 
アミティはとっさに立ち上がって逃げようとしたが・・・
 
 
 
シグ「・・・逃げないで・・
 
 
 
シグはアミティの手をとった。
 
 
 
アミティ「いやっ!放して!触らないで!
 
シグ「・・・
 
 
 
アミティはついシグを避けようと、彼に罵声を浴びせてしまう。
本当は謝りたいのに。仲直りしたいのに。素直になりたいのに。素直になれなくて。
なのに、やりたいことと正反対のことをしている自分が嫌になった。
 
 
 
 
 
アミティ「なんで放してくれないの!?あたし・・・キミのことなんか、大嫌いなのに!!!
 
シグ「!・・・
 
アミティ「あ・・・
 
 
 
言葉にしていけないことを、口に出してしまった。
アミティははっと我に返った。頬から流れていた涙さえも止まり、背筋が凍りついた。
めったに感情を表に出さないシグは瞳から涙を静かにこぼしていた。
けれど、アミティは「ごめん」という一言が、なぜだかどうしても出せなかった。
 
 
 
 
アミティ「・・・
 
シグ「僕のこと・・嫌いならそれでもいい・・・
   けど・・・アミティ。これだけは受け取って。
 
アミティ「えっ・・・?
 
 
 
シグはアミティをつかんでいた手を離して自分の目の涙をふき取って、
 
小さなダンボールの箱を手渡した。
 
アミティは恐る恐る、それを手に持った。
 
 
 
 
シグ「・・・その箱を開けて。
   そうすれば、全部わかるよ。
 
アミティ「全部・・・わかる・・・・?
 
 
 
彼女は彼が何を示しているのかわからなかった。
けれど、箱を開けることにした。
 
 
 
アミティ「わかった。開けるよ・・・
 
 
 
アミティはそっと箱を開けた。
 
すると、箱の中からは無数の蝶が飛び出した。
 
その様子は、とても鮮やかで、綺麗だった。
 
 
 
アミティ「・・・わぁ・・・。
 
シグ「誕生日、 おめでとう。アミティ。
 
アミティ「覚えてたんだね、あたしの誕生日・・・・
 
シグ「当たり前だよ・・・けど、勘違いさせちゃったね。
 
アミティ「怖かったの・・・あたしのことを忘れられるのが・・
     シグがいつものように虫取りしてたから、
     誕生日のこと忘れてたのかなって思っちゃった・・・・
     シグは一生懸命頑張ってくれてたのに・・
     あたし、大嫌いなんて、あんな酷いこと言っちゃった・・・
     シグのこと、ホントはとっても大好きなのに・・・ごめんね。
 
シグ「でも、今はもうアミティの気持ちがちゃんと伝わったから大丈夫だよ。
 
アミティ「うん。けど、ごめん・・・傷つけちゃって・・ほんとに・・・ごめんね・・・っ!
 
シグ「大丈夫、気にしないで。
 
 
 
シグはそう言って、アミティを優しく抱きしめた。
 
 
 
アミティ「うああああああああああああああああああああああっっ!!!!!
 
 
 
 
アミティはシグの胸の中で泣き叫んだ。
 
今まで心の中に溜まっていたさまざまな感情を吐き出すように。
 
溢れる涙が止まらない。溢れる感情が止まらない。
 
シグは彼女の頭や背中を優しく撫でていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・どれだけ時間が経っただろう。
 
涙が乾き、アミティはやっと泣き止み、シグから離れた。
 
 
 
 
 
アミティ「・・・ふぅ・・・
 
シグ「もう大丈夫?
 
アミティ「うん・・・また迷惑かけちゃったね・・・・・
 
シグ「僕は大丈夫だから・・・
    もう自分のことは責めないで。
 
 
シグがそう話した直後、アミティの元に何かが舞い降りた。
 
 
 
アミティ「さっきシグの箱から飛んでいった蝶だ・・・・
 
 
 
そのたくさんの蝶は、アミティの体のいたるところに静かに止まった。
 
 
 
アミティ「・・・
 
シグ「きっとアミティのことが心配になったんだね。
 
アミティ「そうなんだ・・・
 
シグ「だからさ・・・アミティは、元気に笑ってて。
   アミティはいつものように笑っているのが一番可愛いから。
 
アミティ「!
     ・・・うん、そうだね!
 
 
 
シグの何気ない言葉に一瞬照れたが、
 
アミティはニコッと笑顔を見せた。
 
 
すると、「パシャッ」という謎のシャッター音が突然シグのほうから聞こえた。
 
 
 
アミティ「へっ?シグ・・??
 
シグ「とっても可愛かったから写真を撮った
 
 
 
ムシとアミティが大好きなシグにとって、
 
蝶がところどころに付着したアミティの姿はまさしく天使同然。
 
だから永久保存したくなって、こっそりカメラを構えていたのだ。
 
 
 
 
アミティ「もぉ・・写真を撮るなら言ってくれればいいのに。
 
シグ「自然な表情を撮るには不意打ちが一番いいんだよー
 
アミティ「そうなの?ちょっと恥ずかしいなぁ・・・・
 
 
アミティはちょっと照れた。
 
 
シグ「・・・よかった。
 
アミティ「ほぇ?
 
シグ「いつものアミティに戻ってる
 
アミティ「シグのおかげだよ。今はとっても気持ちが晴れやかで・・・とっても気持ちいいの。
 
シグ「確かによく見てみると、瞳が透き通ってる気がする。
 
 
 
シグはアミティの顔を覗き込むようにじっと見た。
 
 
 
アミティ「う、うーん・・それは多分さっき泣いたからなんじゃないかなぁ。
 
シグ「そっか。ねえアミティ・・・・
 
アミティ「なぁに?
 
シグ「僕、いつも可愛くて・・・明るくて優しいアミティのこと、大好きだよ。
   だから・・アミティ・・・これからも、蝶みたいに強く舞って・・・僕を照らして。
 
アミティ「うん。シグはあたしに、とっても素敵なプレゼントをくれた。
     だからあたし、もっと強く綺麗に・・・キミのために翔ぶよ。・・約束する。
 
 
アミティは小指を差し出した。
 
 
アミティ「・・・約束の指切り。
 
シグ「うん。
 
 
 
二人は強く、小指を結んだ。
 
 
 
アミティ「シグ・・・こんなに素敵なプレゼント、ありがとう・・・。あたし、幸せだよ。
 
シグ「これからもいっぱい幸せにするよ・・アミティ・・・・・・
 
アミティ「・・・大好きっ!
 
 
 
アミティは小指を離してシグに抱きつき、彼の心身のぬくもりを静かに感じ取っていた。
 
 
 
 
 
終わり