明け空の展望台

ヤフブロより移転。ぷよの二次創作ゲームを作る者です。よろしくお願いいたします。

嵐の夜 シグアミ

数十分クオリティ、数百文字程度の短いやつです。即興なので主題もクオリティもないです。



ごうごうと、風の音が響き続ける夜。

寝室の中、少女は何も無い灰色の空を見上げていた。

今日はお月見できないね、と少女が零すと、

ちょうどやってきた少年が、寂しいかと問いかける。


「お月様が見えないくらいで寂しくはならないけど……」

「けど?」

「こんな夜は、ちょっと心細いかな」


少女は苦笑いした。一方少年は分からずに首を傾げていたが、


「だって、オバケが出てきそうだもん」


という少女の言葉に意味を知り、無表情のまま全身を強張らせてた。

一度意識してしまえば最後。

乱暴に窓を叩く風の中に、居るはずもない何かが見えてしまいそうだ。


「アミティ、かんべんして」

「あははっ、ごめんね」


固まったまま、逃げるように少年は布団に飛び込み身を埋める。少女もつられてベッドにするりと包まった。

そのままぴたっとくっつき、少女は問う。


「シグ、これなら大丈夫かな?」

「こわいけど、平気かも」


目の前に、見慣れた人の顔と、見慣れた人の体温。

少年にとって、その温もりは、どこか安心できて、ふわっと恐怖が溶けていく。そんな気がしていた。


「あったかい」

「ね」

「アミティは、オバケは怖くないの」

「あたしはオバケだけならそんなに怖くないよ。……でも」

「でも」

「こんなときの一人ぼっちは、ちょっと怖いかな」


それはオバケが怖いのとは違うのか、と少年が問うと、

もしかしたら一緒なのかもね、と少女は笑った。


「だからね、今日はこのまま一緒に寝よう」

「賛成」

「こうしてあったかくして、怖いのを一緒に溶かすの」

「もっとくっついたら、もっとあったかくなる?」

「うん。いっぱいあったかくしたほうがいいよね」


布団を頭に被り、ぎゅっとくっつく。心音が聞こえそうなくらいの距離で身を暖める。

こわいの、とんでけ。

二人でそう唱えるたび、瞼がじんわり重みを増していく。

しばらくして夢に浸る直前、二人は最後におやすみを告げ合う。

そして暖かな眠りに落ちる頃にはオバケも孤独も、

消えない風の不協和音さえも、遠いどこかへ溶け消えていた。