「・・・おやっ?」
エコロはある程度進むと足を止めた。
人の気配がしたのだ。
それも歪みを感じる方向から。
「・・・?」
ふと見た瞬間、
ドォン
「あ痛ぁーっ!」
突然聞こえた大きな音に、エコロはひっくり返ってしまった。
「な、なんなんだー?」
むくりと起き上がりつつ、彼が見た先には、学校の一室。
人の気配が、一人、いや・・二人程度。
そこから感じる強力な闇の魔力に、エコロはひるんでしまった。
「・・・なんか・・いるね・・・・?」
エコロは気になって近づこうとしたが・・・
バチィッ
「痛いなぁ!?」
何もないはずのところから閃光が飛び出し、エコロは弾かれた。
「・・・?」
よく見ると、その一室の周囲には結界のようなものが張り巡らされていた。
時空の歪みによって生じた壁だ。
「ふーん・・・厄介だねー・・・」
エコロは少々考え、魔法を放った。
「スフィ~ンドル♪」
放たれたZ字の電撃は、時空の歪みに穴を開け、エコロはそこに入り込んだ。
「あらよっと・・・さーて、ここで何が起こってるのか・・・あれ?」
ふと気づくと、さっき感じていた闇の魔力が消えていた。
そして今度は光の魔力を感じる。
「うーん・・まあ、しっかり確かめないとね。」
エコロは気配を消し、窓から、人の気配のする一室を覗き込んだ。
そこから見えるものは、荒れた保健室と、見慣れた少年と、見慣れた少女。
二人とも倒れてはいるが、少女の方は結構な量の血を流して倒れている。
「・・・あの子達のこと、覚えてる・・・・あれは・・シグ君と、アミティちゃん、だったっけ?
どうして二人だけあんなところに・・」
エコロはしばらく様子見を続けた。
数十分後
「なるほど・・・りんごちゃん風に簡単にまとめると、
アミティちゃんが記憶喪失になって、魔力を暴走させてシグ君を倒しちゃって気絶して、
そのあとはシグ君が記憶喪失になって、
魔力を暴走させてアミティちゃんを倒しちゃって気絶して、
その繰り返しが何度も何度も繰り返されてるってことなんだね。
同じ時間の間隔でここから爆音が聞こえるのも、時間が歪んでるのも、
これが原因なんだね~・・・暴走って楽しくないし、大変だね~・・・」
エコロのまとめは長いけど大体あってる。
「でも、これだと二人ともいつまで体が持つかわからないよね・・
このまま同じことがずっとくりかえされたら・・」
どちらかが死ぬ。
エコロはつい身震いした。
楽しいことが大好きなエコロにとって、
誰かが死ぬことほど悲しくて楽しくないことはない。
「周りに誰も手伝ってくれる人はいないし・・・
これはボクが助けてあげるしかなさそうだね♪
時空に干渉しすぎるのはよくないとは思うけど、
どうせボクがこの時空を抜けたらみんなボクのことも忘れちゃうだろうし・・・
うん、影で一仕事活躍してみるのも面白いかもね。」
のんきな考えで、エコロは二人を助けることを決心した。
「二人を助けるには、暴走したどちらかをたおせばいいんだろうけど、
どっちを相手にしたほうがいいんだろう。
どっちにしろ、とても強い魔力を持ってることには変わりないけど・・・」
エコロは考え込んだ。
シグとアミティ、暴走したらどちらとも強力な魔力を発揮する子たち。
止めようとしても一筋縄ではいかない、それは言うまでもなくわかっている。
大きな違いは、アミティが光で、シグが闇。
エコロは光が苦手。アミティを相手に回すのはあまりよろしくない。
と、なると・・・
「シグ君を止めたほうが、手っ取り早いみたいだね。」
二人から感じられる生命力が少しずつ減っているのがわかる。
エコロはシグを止めるその瞬間を、息と気配を殺して待ち始めた。
続く・・・
次、視点がまたシグたちのほうに戻りますー